太陽だけはいつもと変わりがない、

「・・・・・・あっちぃ」

「ああ、あついな」

崩れそうな足場をたどりながら二人は歩きだした、地面はほぼ見えなく、瓦礫によって埋まっている、

倒れたビルの背を歩いて、

陥没した道路を飛び越え、

ビルでできた断層の橋をわたった、

そして元第三新東京市でも有数の高層ビルの背で、彼らは見下ろした、

「・・・・・・とことんなんにも無くなっちまったな」

「ああ、立ってるのより、傾いてるほうが多い」

「・・・・どうでもいいけど、ちゃんと人の話しきいてるのかよぉ、生返事ばっかで」

「・・・・・・・ああ、聞いてるさ」

「ならいいけど・・・・あんま考えないほうがいいぞ、」

青葉は一瞬目を上げたがすぐ目をそらした

「マヤちゃんのことなんか考えてないよ」

「誰もマヤちゃんのことなんかいってないぞ」

背を向けたままからからかうような口調で言った、

「まあいいけどさ、少しは俺のことも考えてくれよ、さびしいって」

笑いながら日向は青葉の肩をたたいた、

「おまえ明るいな、何でそんな明るく振る舞えるんだ?・・・・おまえも誰か無事じゃないとか、・・・・葛城さんの事、心配じゃないのか?」

「・・・・」

その瞬間、日向が笑うのを止めた、

「すまん、変なこといって、気になるのはお互い様だよな、」

「ふっ、ははははは、大丈夫だ、あの人は、ミサトさんは少なくとも俺なんかよりも数倍しぶといよ、今ごろビールでも探してるさ、」

そういって日向は表情を一変させて笑った、しかし心の底から笑っているとは青葉には思えなかった、

「本当にすまん・・・どうかしてるんだよな、俺」

「いや、それはこっちも一緒だ、自分でもなんでこんなに明るいのか分からないんだ、・・・・実際心が壊れてるんじゃないかって恐くなるよ」

「・・・心が壊れる・・・」

「・・・・ま、気にするな、少なくとも思考ははっきりしてる、お前に会えてよかったよ、一人だったら、もうおかしくなってたかもしれない、」

「俺だってそうさ、おまえには感謝してるよ、マコト」

「まあ、そう思うんなら、この話はここまでだ、今日中には人が居るとこまでいきたいからな、実際朝からたいした距離は進んでないんだ、瓦礫ばっかだったしな、」

「ああ、それにしても、ミサトさんか、さっきのセリフはしっかり俺が伝えといてやる、」

「あ!」

「はは、さ、いこうぜ」


にわかだが、空元気だけは戻ったようだった、空ではあるが、二人には必要なものだった

 



そして太陽も南中を過ぎ、午後になったとき、彼らは小さな市場の中に居た、

 

「結構生き残ってたんだ、人は」

「そうだな、割と・・・イテェ!!」

日向は突然石をあたまにぶつけられた、誰かが石を日向に投げたのだ、

「誰だ!?おい!危ないだろ!」

「出て行け!!オマエらの所為でこうなったんだ!!」

「え?どういう事だよ」

青葉は日向をかばいながらなげてきた男をみた、

「オマエらネルフの人間がこの前の大地震の原因なんだろ!?いいかげんにしやがれ!その前はへんな化け物を持ってきやがって!!」

「・・・・・・そ、それは、俺達の所為じゃない!」

「ふん!早く出て行け!さもなきゃぶっ殺すぞ!!」

「わ、わかった、マコト行くぞ、」

「あたたたた・・・」

 

青葉達がその場を離れるまで男はやじを続けた、

市場の外れまで逃げた二人は、目立つネルフの制服を普通の服に替える事にした、

市場の外れにあった、掘っ立て小屋の雑貨屋で適当な洋服をそろえることにした、

「済まない、洋服売ってくれないか?」

「らっしゃい、どんな服がいいんだい?」

「俺とこいつで適当な服を頼むよ」

「そうかい、じゃあこのダンボールの中から選んでくれ」

中にはごったに服がはいっている、どうやら拾い集めたものらしい、

「うーーん・・・・じゃ、これとこれ、いくらだい?」

「は?お金なんかじゃ売らないぜ、」

「へ?」

「今はな・・こういう物が金代わりなんだよ」

そう言って、親父はがらくたの入った小箱をだした、中には時計やらライターやら、眼鏡のレンズらしきものや、何かのカプセルなどが入っていた、

「つまり、物々交換って事?」

親父はうなずくと手を差し出した、

「うーーんなにかあるかな、」

そう言って二人は体中をまさぐった、

結局ろくなものは見つからなかったので日向の腕時計と、今着ている服を下取りに出して適当な服と、マントのような大手の布を買うことができた、

「ネルフは嫌われ物らしいな」

「まあ、無理もないんじゃないのか?もともと好かれちゃいなかったさ・・・・」

「あんなに苦しんだのに・・・」

「ま、そのうち歴史がでも証明してくれるんじゃないのか?、まあ、さし当たってはネルフ職員だったことは伏せて置こうな」

「ああ、しかしホントに結構な数の人は生き残ったんだな、市場なんて活気があったぞ、商売根性たくましいというか・・・」

「しかし、人はともかく、ここまでひどい状態なのか、政府は消滅したのかな・・・」

「世界はどうなったんだろうな、流石にここよりかはまともな状態の国もあるだろう」

「・・・どうなるのかな、日本は」

「さあなあ?俺はさし当たって今日どこで寝るかが気になるな」

「はは、そうだなそれよりなんか食べないとな、恐ろしく物価が高いからどうするかな」

「さし当たっては来る途中のコンビニで拾ったので間に合うんじゃないか」

「その後だよ、」

「どっかに就職でもするか?」

「はは、そうだなぁ・・・」

そう言って二人は市場を横切っていく、途中すれ違う二人組み、活気のある町で人の顔を見て歩くことは無かった、

 


 

 

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