ここは・・・・いったい何処なんだ?
周りは見渡す限りの水面、
漣一つ立たない、
僕はその水面の上に微動だにせず浮かんでいる、
・・・・何の音もしない・・・
空は夕焼けだ、太陽は見当たらないが空が赤く焼けている。
・・・・最後のイメージ・・・そうか・・・そうなのか・・・
僕は・・・・・
僕は・・・・・・・・・
またやっちゃったんだ・・・・
果てるともない長い時間、
もしかすると一瞬だったのかもしれないが、
向こうのほうに人影が有る、
誰だかなんて愚問だ、
レイ・・・・・
何時のまにか彼女は僕を膝枕した、空中で。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・母さんなんだね・・・・・」
「・・・・・・ちがうわ」
「じゃあ綾波は・・・・なんなの?」
「元はそうだったのかも知れない、でも今は違う」
「・・・・・じゃあ今の綾波は誰なの?」
「碇君を除くすべての人・・・・と言うべきかしら・・・」
「・・・・そうなんだ・・・なんで僕は綾波と別になっているの?」
「・・・アナタはアダムだから、私が貴方と別になってしまっているのよ・・・・」
「・・・・・・・・・・そういうことか・・・僕は・・・・・・僕は・・・・」
「そう、碇君、今あなたはアダムなの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「補完が行われたとき、唯一の外部に存在するリリスはあなただったわ」
「・・・・・」
「そしてあなたはアダムの役を請け負うことになった」
「・・・・・」
「すべての人間は母なるわたしの元へ」
「そして僕の元に綾波も?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何時の間にか空は夜になっていた。
音は僕と綾波の息遣い、心音、体の動く音だけ。
「・・・・・・・・・・・今の私は貴方に飲み込まれているの、今の私は幻影なのかもしれない」
「・・・・・・・・・・・・・」
「私は元々貴方の一部なのだから、そして昔引き離された」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・そして今はあなたの中に本当の意味では戻れていないわ」
「綾波はそれが悲しいことなの?」
「・・・・・・・・・・・多分」
「そうか・・・・・・」
「・・・碇君、私を取り込むか、また元のように分離させるか・・・迷っているの?」
「・・・そうかもしれない」
「碇君、時間はいくらでも有るの、でもいつかは選択しなければいけない・・・」
「・・・・・・このままではダメなの?」
「このままでは不完全、すべての可能性が交錯する世界では絶対がないの、それは存在していると言う事では無いわ」
「・・・・・・・・・・僕は・・・・・・」
「碇君、貴方はなにを望むの?」
「僕が望む事?」
「そう、それが選択」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「貴方は元の世界を嫌っていた。・・・・そうじゃないの?」
「・・・・そうだね・・・・他人がいる世界」
「でも貴方はこうやって選択を迷っているわ、なぜ?」
「・・・・きっと・・・・希望・・・いや・・・そんな高尚な物じゃあない・・・・」
「貴方の真実に高尚も下等も無いわ」
「・・・・・・・・・僕はあれでも楽しいと思ったことがたくさんあったんだ」
「・・・・・・・・・」
「綾波、アスカ、ミサトさん、父さん、トウジ、ケンスケ・・・それにもっとたくさんの人たち」
「・・・・・・・・・」
「すべて他人だし、どの人も一度となく嫌だと思った・・・、でも僕はそこに存在していた」
「・・・・・・・・・」
「嫌とか、嫌だけど・・・それだけじゃないんだ」
「・・・・・・・・・きっと僕はまたみんなに会ってみたいんだと思う」
「・・・・・・・・・・貴方は望まれていないかもしれないのに?」
「僕が憎まれていても、嫌われていても、殺されたとしても」
「・・・・・・・・・・・・」
「それは僕なんだ、僕はそこにいることになるんだ、」
「・・・・人に価値観を任せ、流れに任せる、それは他人に頼っているのよ」
「いいんだ、それで、もともと僕がアダムだと言うのなら、すべての人は僕から生まれることになる、結局は僕なんだ。」
「・・・・・・・・・・・・」
「でも、今の僕と後の僕、いや、前の僕とは別なんだ、今の僕はアダムに限りなく近い存在、唯一、綾波を飲み込みきれていないだけ、だからもしかすると綾波と離れたとたんにまた意見を変えるかもしれない・・・いや、多分そうなる・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「それに今は真実なんて価値は無いんだ、真実は今は僕と共にあるのだから」
「そう・・・・でもそれでいいの?」
「もしこのままの状態でいられるのならば、僕はそれでもいいと思う、でも選択しなければいけない」
「そっちじゃなきゃ・・・・僕を含めたすべての僕たちを消滅させることになる、」
「わたしを飲み込んだままならば、欠ける物は無いのに?」
「・・・・・・・・・・・もしかしたら・・・・とも思うんだ、でも綾波を飲み込んだ世界、まったくの揺らぎのない世界・・・それだけはおかしいと思うんだ、過去から未来までもすべて知っている・・・絶対の存在・・・・、それは・・・・・・」
「じゃあ私を吐き出して・・・・すべてを吐き出して・・・」
「僕はまた無知な少年に戻る、でもここで選択したことは戻らない」
「それでいいのね?」
「・・・うん、お別れだね・・・」
「きっとすぐ会えるわ・・・・・」
「また会うよ、それはわかる、そしてこの後どのような道を進むのかも今の僕はわかってるんだ、でもそれももう忘れる・・・・」
「さよなら・・・」
「さよなら・・・綾波、少しの間だけ」
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