別れ、そして再開 第一話
投稿日 5月28日(金)19時45分 投稿者 ZiM
いつ頃からこれが始まったんでしょうか、

事の始まりは、あの最後の戦いから少したったころに起こりました、






第一話 「もう、昔のこと」


「木連からのグラビディーブラスト確認!!」

「1-2時の方向!!ボース粒子反応!!木連の人型です!」



結局あの木星遺跡の戦闘、あれで終わることにはなりませんでした、

決着、そんな言葉なんてだれも欲しかったわけじゃなかったのに・・・、



「地球側の損害!巡洋艦3隻大破!戦艦4隻大破!突撃艦3隻轟沈!」

「残るは戦艦7隻、巡洋艦4隻!!」

「新たに木連側の戦艦を撃沈!!木連側の戦艦あと4隻!!」



だれもがもう終わりにして欲しかった、でも、

意地、



「負けるな!ここで負けてはならん!!」

「旗艦ユキヤナギのディストーションフィールド消失!!」

「ヤブデマリが盾に!!」



私もその戦いの中にいました、

クルーのみんなも、



「エステバリス緊急補修完了!!でます!!」

メグミさん

「おらおらぁ!カタパルトあけろぉ!」

リョーコさん

「負傷者の保護、救出をひなぎくでおこなってください!」

アオイさん

「グラビディーブラスト発射準備完了」

・・・私

「敵マジン隊にむけて発射!!」

艦長、いえ、ユリカさん、



みんな最後の戦いとうっすら感じていました、

でも、そんな事を考えることはできませんでした、

戦争、ですから・・・・



「くそ〜!敵が多い!!」

「テンカワ!上だ!!」

テンカワの機体の後ろからきていたバッタがリョーコにたたき落とされる

「ありがとう!リョーコちゃん!」

「へへっ、いいってことよ!おっと、きたぞ!!ヒカル!イズミ!それとテンカワ!!」

「いくぞ!」




いつもどおりでした、

ナデシコのエステバリスは今回も一機も欠けずにかえってくるはずでした、

ですが、やはりずっとそれが続いていたのがおかしかったのでしょう、




「っぁあ〜〜!!」

「テンカワ〜〜!!」

「アキト!!」

「・・・テンカワさん・・・」




テンカワさんはかえってきませんでした、

私はテンカワさんレーダーマーカーが消えるのをみました、

そして、二度とマーカーがつくことはなかった・・・






それからすでに2年が過ぎました・・・





「ルリちゃん、もういいよ、あがって〜〜」

「わかりました、」

ふう、オモイカネ、後一寸で弟ができるよ、

・・・妹かな?

オモイカネも楽しみだよね・・・





ここはネルガルの研究所、

ナデシコに搭載されていたオモイカネシステム、

それの有用性が認められ、それを民生化するための研究が続いています、

私は戦争が終わった後、研究所にもどるはずだったのですが、

・・・実験体としてではなく、

オモイカネとのコミュニケーション役として研究所に入ることになりました、

「じゃあね、また明日」

「さようなら」


研究所を出ると蝉の声が聞こえました。






戦争終了から2年と一寸、

二つの世界はだんだんと歩み寄りを見せています

地球の文化、木蓮の技術

二つはだんだんと混ざり合いだし、そしてだれもが微かな違和感のなか、

戦争が終わった後の時を感じていました、

緩やかですが、だれもが笑顔を出せる時代です、

ですが・・・



ピッ

ピッ

ピッ

ピッ

ピッ


時がとまっている人、

ピッ

ピッ

ピッ

ピッ

ピッ

ピッ


あの時から時間の止まっている人、


あの人はまだ目を覚ましません、

ずっと、ずっと眠りについています、

もう戦争が終わった、そんな事すらあの人は知らないのかもしれません、





         「アキトさん・・・」





ここはネルガルの病院、

私はよくここに定期検診で訪れます、

そのときにはなぜか私はテンカワさんの病室を訪れています、

彼は眠りつづけています、すでにもう2年とちょっとがすぎました、

あの時のままの面影を残したまま、





部屋は大きなベッドとテンカワさんが生きていることを示す機械、

そして大きな窓がついています、



テンカワさんは、ずっと眠っています、

テンカワさんはあの後ちょっとした英雄扱いになりました、

政府が戦争責任を逃れる意味もあったのでしょうが、

テンカワさんには莫大な・・・慰謝料がわたされました、

一個人としては莫大な、

そのおかげで、彼は現在ここに入院しています、

最高の設備が揃っているここで、テンカワさんは起き上がることなく、

ねむっています、



そっと寝顔を覗くと、

まるで無表情に寝ています、



「・・・・・・・・・」


私はもってきた花を花瓶にいけようと花瓶を手に持ちました、


ここの花瓶はいつのまにか置いてありました、

誰かがもってきたものらしいです、

…多分メグミさんでしょう、

ここの花瓶は絶えることなく花がいけてあります、

私やメグミさんたちがくるからです、

ここの花が枯れるときがくるのでしょうか?

・・・・・・




私は花を生けおわると手荷物をもってゆっくりとドアを閉めました、


カードキーを通して部屋の鍵を開けると私は買ってきた食事を温めます、

食事をしながらさして興味はないもののニュースを流し読みします、

遺跡発掘に新たな進展・・・

「・・・・・・・・・・」

まだ人はあんな物を掘りつづけているのでしょうか?

もう、オーバーテクノロジーは必要ない、

もう人は人の作り出すものだけでは物足りないのでしょうか・・・、



うんざりしてチャンネルを回すとききなれた声が、

メグミさんです、

オペレータを止めた後はOLになったそうですが、やっぱり声優に戻ったらしいです、

彼女の声はアニメの女主人公から流れています、

「負けるわけにはいかないわ!!」

「皆の力をあわせて!!」

「グレートスパイラルアターー!!

セリフの途中ですがチャンネルをかえました、

あまり興味がある訳でもなし、

うるさいだけです、



・・・テンカワさんはこういうの好きだったな・・・、



気づくと食べるものもなくなっていました、

トレイをダストシュートにほおり込むと、もう10時を回っていました、










チャプ・・・

昔は好きではなかったのですが、

最近はシャワーよりも湯船に浸かることが増えた気がします、





最近、空虚という感情があります、

いえ、感情的にないから空虚なのかもしれませんが、

終わることのないオモイカネシステムのシェイプダウン、

変わることのない食事、

変わらないTV

・・・起きないテンカワさん





ルーチンワークになった生活、

人は刺激を求める、

だれがいったのか知りませんが、

私はそんな感情は抱かないと思っていました、

でも、そんな事はなかった、

ナデシコに乗っていたあの短い間に私は変わったのでしょうか?






ザバァ・・・





エアコンがきいた部屋に戻り寝る準備を始めました、

机の上に一冊の本、

日記、航海日記、

あの時間が日記の中に詰まっています、

配属されてすぐに航海日記をつけることになったので書き始めたもの、

最初は日常の業務だけでしたが、

だんだんと自分で書き込むことが増えていき、

最後には日記帳になっていました、



いまでも、それを開けばあのころが鮮明に思い出せます、

今日はそれを開くことはなく、ベッドにもぐり、電気を落としました、




肌ざむい、ベッドがなぜか暖かくありませんでした。


−−−−−
続く


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