別れ、そして再開 第四話 |
「アキトさん、退院したらどうするんですか?」
「そうだなあ・・・まだ考えてないんだけど、やっぱ食堂でもやろうかなって思ってるんだけど・・・」
「そうですか」
「でも、正直まだわからないや、」
「お金の心配はないでしょうし、ゆっくり考えてください」
そういうとテンカワさんはベッドに座りながらすこし考えたような表情になりました
「・・・でもなんでこんな一パイロットに大金がでたんだろう・・・」
ごくもっともな理由でした、
・・・きっと理由を聞いたらどう思うことでしょうか、
「なんでなんでしょうね」
私も二年の間に変わったみたいです、嘘がすらすら出るようになりました・・・
帰り道、あの人が頭からはなれませんでした、
戦争がおわったのに、意地の張り合いで、星と星の取り引きに使われたあの人を、
ユニークな存在はいつの世でも疎まれ続けるのでしょうか、
「我らとしてはあの遺跡に関連がある危険分子をほっておく事は、我らとあなたたちにとって良いこととは思えません」
「たしかに、しかしそちらに渡すというのは私たちはあまり良い考えとは思っていません」
「では調印の条件として、遺跡関連の人物をこちらに送っていただきたい、」
「・・・・・・」
「これ以上この戦争を続けるのは双方にとって無意味ですし、この調印で双方が歩み寄るのはそれを差し引いても余ると思われますが・・・」
「・・解りました、ではミスマル・ユリカはそちらに引き渡します」
私はその情報を戦争後に手に入れました、
艦長、いえユリカさんは和平の取り引きに使われたのです
戦時に重要視された火星の遺跡を利用できる人物、
しかも大きな影響力をもつミスマル家にいるユリカさん、
今彼女の消息は分かりません、
私が病室をノックすると中からアキトさんではない声が聞こえてきました
「メグミさん、こんにちわ」
「ええ、今日も暑いわね、・・・ちょっといいかしら、」
「はい」
病院のロビーは順番をまつ人たちがぽつぽついるだけで、
とても広く感じられました、
「・・アキトさんのことなんだけど・・・」
「はい」
「あれは本当だったの?」
「何がですか?」
「・・・・・アキトさんの記憶操作って・・・」
「・・・はい」
ユリカさんが木蓮に引き渡された時、当然テンカワさんにも追求がありました、
しかし、たいした権限をもっているわけでもない一パイロットをそこまで扱うわけには行かず
睡眠状態のテンカワさんに夢を見させました、
それにより、火星の遺跡に関する記憶を少しいじられたそうです
「・・・・すこし変だなって思ったの、アキトさんのいうことが少しずれているような・・・」
「確かにそう思います、おそらく弊害が出たのでしょう、」
「・・・・ルリってさめてるのね」
「え?」
「アキトさんの記憶がいじられたって!そんな事許せると思っているの!?」
「・・・・・」
「記憶はその人を形作るものよ!、それをいじくり回すって事は、その人を人として扱っていないって事じゃない!!」
「・・・・アキトさんはまだ、幸運なほうです、」
「・・・・そんなことを言ってるんじゃないわ!」
にわかにロビーの視線が集まるのが感じられました、
メグミさんは私を一瞬にらんでアキトさんの病室にもどっていきました、
・・・・病室に行く気がしませんでした、
そのまま病院を出るとバス停まで歩き出しました、
自分なりに、非人間的なことを言ったと思いました、
でも・・・
でも、アキトさんは・・・
やはり、まだ幸せなほうだと思いました、
家に帰るとメールが届いていました、
メグミさんから、謝罪のメール、
あと、ネルガルから、明日の予定
・・・自分の目を疑いました、
アキトさんからメールが届いていました、
--ルリちゃんへ、
今日はすぐ帰っちゃったみたいだったけど、どうしたの?
メグミさんとケンカでもしたの?
ところで、ルリちゃんなら知ってると思うんだけど・・・
なんかおかしいんだよ、周りがなんか違和感に包まれているって言うか・・・
自分が変わっちゃったみたいな感じなんだ、
いままでじゃあ、考えもしなかったようなことなんだけど・・・
それをメグミさんに相談したら、ルリちゃんに聞けって、
それっきりだまっちゃってさ、
なにかしってるの?
今度きた時でもいいから、ちょっと話してよ、
こんな不躾なメールごめんね、じゃあ、
アキト
それを読みながら私のことを考えました
私はネルガルでオモイカネをいじっています、
そのおかげで社内のネットワークをよく暇つぶしにハックしたりしました、
ネルガルが政府と繋がっているからなのでしょう、戦争に関する秘密文書が出てきました、
個人的にはそれをみてなんと言うこともありませんでした、
でも、偶然ユリカさんのことをみたとき、
この戦争は何だったのか、どう終わったのかと言うことを調べ始めました、
数ヶ月かかって、ほぼ全ての情報をみることができました、
やらなければ良かった、
調べている最中にもそう思いましたが、止めることはできませんでした、
おわったとき、自分はしらなくても良い事を知りすぎたと感じました、
全ての情報は破棄して、
もうわすれよう、
そうおもいつづけ、
そして生活の片隅に埋もれるほどまできました、
でも、アキトさんは起きた。
わたしはアキトさんにこれを話すべきなのかわかりません。
選択を迷うなんていついらいのことなのか・・・、
そうおもいながら簡単な返事のメールを書きました。
−−−−−−
続く
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